Tuesday, April 23
Shadow

02K4766

02K4766

FRU NO: 02K4785
28-JAN-99
Assembled in Chaina

IBMのノート用鍵盤の中では、なんと言っても開発名「バタフライ」で世に知られるThinkPad 701Cが有名です。しかし玄人筋にはむしろ、ThinkPad600系の鍵盤を代表作と挙げる向きが多いと思います。IBM製品番号 02K4785。歴代のThinkPadの中でも,600系はキーボード周りの剛性が突出して高く,例の「防弾仕様」なenhanced 101に慣れた人でも十分満足できる打鍵感を与えてくれています。このようなノートPCは、おそらくこれを最後にもう現れることはないでしょう。

全体の写真を下に示します。まず配列について見ましょう。 私は別にWindowsキー絶対排斥派でも英語配列絶対派でもありませんが,スペースの限られたノート用キーボードでは,この写真のもののように,Windowsキーのない英語配列のほうが使いやすいと思います。日本で売られているThinkPadは,当然ながら日本語配列ですが,日本IBMでは有料で英語キーボードに交換するサービスも行っています。2万円近い料金を取られるのが残念なのですが,キーボードの名門IBMの心意気を示すものとして今後も続けてほしいところです。

ThinkPad 600シリーズ用鍵盤(By courtesy of K. Tamagawa.)
ThinkPad 600シリーズ用鍵盤(By courtesy of K. Tamagawa.)

キーの間隔はフルキーボードとまったく同じです。打ちやすさを測る上ではこれは重要なことです。ただ,ノート用という制約上,ESCとF1がほとんど重なった位置にあり,ESCを打ったらヘルプが立ち上がるというようなことがよく起こります。あわてて日本語で文章を打っている時によく経験する現象です。さらに要望を言えば,左隅下にあるFnキーをもっと小くしてCtrlとAltの間に置いてくれたほうが私としては使いやすいです。このキーをどこかもっと目立たないところに追いやって,CtrlとAltの間に隙間を空けてもらうのが最善です。めったに使わないFnキーがこのような一等地にあるのは不合理だと思います。

キーの構造はゴム椀式です。下の写真の中央にある半透明の物体がゴムです。それの周りにパンタグラフのような構造が作られており,それでキーを固定し支えます。各社微妙な違いがあるものの,ノート用キーボードにしばしば見られる構造です。下の写真では,内部が露出したキーのうち手前がパンタグラフの上がった状態,奥が下がった状態です。本キーボードにおいてはこのパンタグラフが極めて精密に作られているためか,キーのぐらつきは著しく小さく,カチャカチャ感もありません。1379590においてはキーの上下運動のガイドとなるのがキートップにつけられた足でしたが,こちらではひとえにパンタグラフ構造です。歴史的事実としては1379590のスイッチはこのパンタグラフ構造の元祖に当たるものですが,機構学的には別系統に属すると考えてよいでしょう。

日本IBMのThink about ThinkPadというページでは開発者のインタビューとして

機種によって多少異なりますがストロークは3~2.5ミリ、切れのよいクリック感のためのピーク加重は60gに設定しています。

という言葉が紹介されています。SPARC氏の測定値やSTART氏の測定値を見ると,この60gという数字が意外に高いものであることがわかります。5576-003およびA01のピーク荷重と同じ値です。ただ,ノート用だとキーの押し込み量が全然違いますから,力×変位=仕事,という力学上の定義を出すまでもなく,指が感じる負担も少ないのでしょう。

ThinkPad 600シリーズ用鍵盤のキースイッチの接写。
ThinkPad 600シリーズ用鍵盤のキースイッチの接写。

さすがにお絵かき中心の仕事には難がありますが,文章主体の普通の仕事にはTrackPointは大変すぐれた指示具(pointing device)だと思います。以前は「指が痛くなる」というような評判もありましたが,TrackPoint IV になってから操作性が格段に改善しました。電気的接点において相当の改善がなされたと思われます。設定によっては非常に軽い力でポインタを移動させることも可能です。ただ,Webを長々とスクロールしていると,指を離してもポインタが流れていってしまうことがあるので,それがTrackPoint Vに向けての研究課題でしょうか。