3479-JA4
P/N : 38F4610
EC No. C72415
5576-001の亜種,3479-JA1の兄弟機です。ShopUに本機ネット上唯一の紹介がありますのでそちらもご覧ください。秋葉原の一角,得体の知れない店で買ったのですが,鍵盤自体も怪しい雰囲気を醸し出しています。まず,キートップの日本語表記がカタカナです。リターンキーの形も5576-001とは異なります。
この鍵盤は「実行」キーが摩滅しています。標準配列では右Ctrlに当たるところです。大型機の端末臭さが醸し出されています。実際本機はIBMのAS/400というサーバーに付属されたものです。これが証拠です。レジストリ変更によりWindows2000でも使用できます。ただ,キー配列は相変わらず特殊です。私は左Ctrl+vとかcとかを多用するので,左Ctrlの位置がA01配列と異なっていることは致命的です。私は好みませんが,ソフトウェア的にキーを移し変えて使うというのが現実的かもしれません。
この配列の由来を考えてみるのは興味深いです。この種の配列は,私の知る限り,古いものだと1980年代のIBM 1390876という座屈ばね式の英語鍵盤,最近のものだとUnicompのTerminalもしくはEmulatorと呼ばれる英語鍵盤に見ることができます。これらは122キーです。IBMが米国企業である以上,英語鍵盤の方で規格が定められ,それを日本語用にアレンジしたものだと考えた方が自然でしょう。これらの鍵盤は英語鍵盤には珍しく(というのは1391401以降のenhanced 101鍵盤にはそのような記号はない),IBMの大型機用の文字コード体系であるEBCDIC特有の記号が存在しています。これは,これらの鍵盤がサーバーの端末用途に設計されたことを示しています。1390876はenhanced 101とまったく同じ座屈ばね式で,Unicomp製品では座屈ばねのものとEnhanced Quiet Touchと称するゴム椀ばねの両者が存在します。
3479系あるいは5576-001では,日本語を扱う都合上,スペースバー周りの再設計を伴う設計変更が必要になるわけですが,その際,IBM Corp.の社内標準に反してアルプス板ばねスイッチが採用されたのはなぜなのでしょうか。日本企業であるアルプス電気の営業が巧みだったのでしょうか。それとも単に,あの座屈ばね機構が,日本人の指には合わないと判断されたためなのでしょうか。真相は知る由もありませんが,5576-C01のところでも書いたとおり,日本IBMでは,米国オリジナル品よりも軽いキータッチが好ましいと考える人が多かったのは事実のようです。
スイッチ機構,筐体ともに5576-001と同じです。ただ,リターンキー形状に微妙に差があります。本機は買った時にはとてつもなく汚かったのですが,そのためかホコリが内部に侵入しているらしく,キーにやや引っかかりが感じられます。分解して潤滑すれば直ると思いますが,あやしい鍵盤にはあやしい触感の方が似合っている気がして,キートップとガワを外して掃除する程度で,そのままにしています。これはアルプススイッチ特有の劣化現象というよりは,摺動部がつきものの鍵盤という機械において避けがたい現象だと判断しています。
2001年8月現在,新品入手は不可能です。Yahoo Auctionsでもたまに出るという話ですがよくわかりません。本機にふさわしいジャンク屋でのあやしい出会いを期待しましょう。