Friday, April 19
Shadow

Space Saver Keyboard II

Space Saver Keyboard II

Made for IBM, Armonk, NY.
Made in Thailand

最近の鍵盤界のヒット商品です。ときおりSpace Saver 2などと省略されますが,Space Saverというのは座屈ばね式の10キー省略型鍵盤のことを指しますので,ちゃんとKeyboardをつけましょう。私の手元には日本語版と英語版がそれぞれ1台ありますが,型番などは以下のとおりです。

日本語版英語版
Model NoRT3200RT3200
MFG93008291
PRINT93008291
P/N-Fru P/N32L0907037L0888
Rev.A02A02

本機の日本語版は1999年6月9日に1万2500円で日本IBMから発売されました。入手困難のアンティークキーボードに慣れている鍵盤趣味者としては,新しい鍵盤だと,まあいつでも買えるさ,と甘く考えがちです。これは1999年に在庫が掃けた後,しばらく入手困難となっており,ずいぶん後悔しました。しかし2001年になって大量に出回っているようです。それに伴い,一時期よりも値段が下がりました。日本IBMの通販では7600円です。アメリカのShop IBMでは2001年10月現在,送料別で155ドルとありますから,日本IBMから注文するのがお買い得です。日米でのこの価格差は,日本での省スペース鍵盤の人気を示して余りあります。

日本IBMの製品発表レターによれば

  •  幅が14.6インチと小さいため、ラック型サーバーのトレイのような限られたスペースにフィットします
  • トラック・ポイント付き
  • マウスポート付き
  • 通常のフル・キーボードと同じレベルのキー
  • 色はステルス・ブラック
  • OS/2,Win95,Win98,Win NT 用のドライバー

とのことです。いかにもIBMらしく,サーバーを入れる棚用に考えられた鍵盤のようです。ドライバとしてWindows 2000の記述がありませんが,IBMのサイトによれば,OS付属のドライバで大丈夫と書いてあります。しかしトラックポイントIVの能力を最大限に引き出すには,ThinkPadの最新ドライバを使うのがいいでしょう。スクロールボタンが格段に使いやすくなります。

ドライバCDが付属します。自分のWindows2000機に,何も考えずCD-ROMから(結果的にNT用の)ドライバを組み込んだのですが,ひどい目にあいました。PCが起動しなくなります。セーフモードで起動したりとひどい目にあいました。Windows2000だとデバイスマネージャなどからドライバを削除できないので面倒です。ドライバのファイルを同定して「手で」消さないとなりません。くれぐれもWindows 2000の方はCD-ROMを使ってはいけません

残念なのは,余計なキーがあるために,Altキーが小さくなってしまっていることです。親指でクリックボタンを押せば済むのにわざわざアプリケーションキーを叩く人はいるでしょうか? Windowsキーにしても,クリックボタンがある以上,それほど必要でないように思います。上の写真のように,キーの配置は直線的であり,1391401以来の湾曲配置に慣れた手にはやや打ちにくさを感じます。トラックポイント付きの鍵盤でこの配置を取ると,しばしばトラックポイントに爪を引っ掛けるという問題が出ます。同じことは1379590にも言えることです。

小さいながらちょっとした重みがあり,現代の普通の安物キーボードに比べて,それなりの質感を感じます。ただ,座屈ばねのSpace Saverに比べると筐体の軟弱さは明らかで,キーを打ち込んだときに筐体が微妙にぐらつき不快です。とりわけ爪足を立てたときの打鍵感はかなり悪いです。キーにミートしてるなという感じが全然しません。爪足なしで使って何とか我慢できるレベルです。

薄膜接点のゴムばね式です。ShopUの店長さんのサイトに非常に濃い分解記があります。ゴム椀がだーっと整列している絵は壮観です。そこでも指摘されていますが,キータッチはやや固めに設定されています。それはそれでいいのですが,ばね係数が高すぎて,押しぬき感がよくありません。ぺこぺこした感じです。ゴム椀に切り欠きを入れたくなる気持ちはよくわかります。押し込んだときにやや引っ掛かりを感じるのも減点対象です。カチャカチャした音もやや気になります。栄光のIBM鍵盤の歴史を思う時,とてもこのキーボードの打鍵感には合格点をつけることはできません。

冒頭にRev. A02と書きましたが,これはrevision,すなわち「改訂A02版」という意味のようです。版により打鍵感が異なるという情報も目にしますが,未確認です。私が確実に言えることは,同じRev.A02で比較しても,日本語版と英語版では明らかに打鍵感が異なるという事実です。日本語版で見られる,キーを押したときの引っかかりやカチャカチャ音は,英語版ではおおむね姿を消し,比較的しっとりした手触りとなっています。IBMゴム椀式の代表作・プリファードの足元にも及ばないものの,その機能性も勘案すれば,本機英語版(のRev.A02新品)にはゴム椀式としては我慢できる部類に入れてもよいでしょう。ただし,しばらく使っていくと,日本語版同様の,固いだけ固くて指となじまない粗悪なタッチに近づいている気がするのが気がかりです。

付記。本鍵盤を半年以上使っていますが,危惧したとおり,打鍵感の劣化が明らかに感じられます。ゴム椀の弾力が低下してきたのでしょう,押した感じは非常に固く,ある程度押すと突然カクンとスイッチが入ります。しかもキーのはめあい精度が低いせいか,カタカタ音が下品です。打鍵感に関しては,残念ですが,5576-B01と同水準の出来であると結論せざるを得ません。

付記(2002年12月)。最近、鍵盤趣味者の中で、RO-59ないしスムースエイドという潤滑剤を使ってキーボードの打鍵感を改善する試みが話題になっています。具体的に本キーボードに適用した例についてはIWAMA Naozumi氏のStudio Artifactがありますのでご参照ください。実際私もやってみましたが、それなりに効果があるようです。

本機に10キーがついたものは,2001年8月の時点で, アメリカのShop IBMにて151.05ドルで売られていました。スクロールボタンもてのひら支え(palm rest)もついています。ゴム椀式です。User’s Sideのページにより,湾曲配位(cylindrical curved sculpture)であることが確認できます。現在のところ私の購入希望リスト第1位ですが,ちょっと高価なので二の足を踏んでいます。なお,10月の時点ではそれは売り切れの様子で,代わりにUSB接続のSpace Saver Keyboardが159ドルで売られています。トラックポイントつきのキーボードはIBMのウリのひとつなのですから,この品薄状況は何とかしてほしいものです。

裏側にはマウスソケットがあり,マウスを使えます。ただしホイールはききません。手前に穴が三つ見えますが,これは薄膜接点の上部(キー側)につながっていて,一応排水口として機能します。このあたりは1391401のIII型あたりから続くIBMの伝統の片鱗がしのばれますが,本格的に防水構造になっている1391401のIII型などとは異なり,その構造からして,水をこぼしたらすぐに壊れるでしょうね。

2001年8月現在,Options by IBMのサイト売っています。秋葉原でも容易に入手可能です。たとえばクレバリーやUser’s Sideで新品が入手できます。Yahoo Auctionsでも見かけますが,新品が7600円で入手できるなら,何かと揉め事の多いオークションサイトを使う必要はないでしょう。お好みの店の店頭で手触りを確かめた後,直接IBMから買うことを勧めます。