Saturday, May 15
Shadow

1393278

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Date 06/08/101
Model M
Made in USA

いわゆる84-key Space Saver です。Space Saver Keyboardと書くとゴム椀式の別モデルになりますので,Keyboardをつけてはいけません。日付の101というのは2001年という意味のようです。Unicompの正規代理店であるNeotecで買ったものです。 同社の説明によれば,これは1988年製のIBM製品を流用して作ったものだそうです。内部の鋼板にはIBMの銘がある由です。別項でも触れましたが,Unicompの本社があるケンタッキー州のLexingtonにはかつてIBMの鍵盤開発製造部門がありました。そこがLexmarkとして独立し,さらにUnicompとなったわけです。この歴史的経緯から考えて,UnicompはIBM時代の資材を大量に引き継いだものと思われます。

本機はしばらくの間Unicompのサイトからいつでも注文できる状態にありましたが,同社はIBM銘の鍵盤を売り切ってUnicompブランドに一本化する方向のようです。私の知る限り2001年5月の段階でUnicompから入手したという記録がありますが,直接メールで確認したところ,本家のUnicompにはすでに在庫がないそうで,入手は難しくなってきています。IBMというロゴを入れるからにはその使用料(royalty)をIBMに支払う必要があります。Unicompはその使用料負担が割にあわないと判断したのでしょうか。

座屈ばね機構について1970年代にIBMから出された特許の権利期間はすでに終了しているはずです。座屈ばね機構が公共の財産(public domain)となり,Unicompはもちろん各社から骨のある鍵盤が発売されることを望みます。

薄膜接点に座屈ばねをあしらった構造だと思います。これは1391401と完全に同じです。キータッチも完全に同じと言ってよいと思います。構造史のところでも書いた通り,これが「メカニカル・キーボード」かと言われれば,座屈ばね式である点ではYes,薄膜接点であるという点ではNoです。もともと薄膜接点は,電極部にホコリが入ったり,可動部の摩滅や腐食により導通が不完全になるのを避ける目的で開発されてきたものです。薄膜という性質上液体の浸入には致命的に弱いのですが,普通の用途には極めて耐久性の高い構造です。薄膜接点であることが何か品質低下の証であるかのような解釈は正しくありません。

キートップ着脱式で手入れが楽です。AltおよびSysReqが緑色で印刷されています。大きさの割にやたらと重く,IBM鍵盤の王道を行っています。ケーブルはenhanced 101系に共通の着脱式です。裏にスピーカーの穴がありますが,中には何も入っていません。これは1391401と同様の特徴です。

日本語鍵盤でこのSpace Saverに当たる5576-003と比べて,筐体のプラスチックの成型精度が低いです。これは1391401以来同じです。ガワを持つとわずかにぐらつきが感じられます。本機が1391401などと比べて遥かに剛性感に富み,5576-003に近い,といった評価を目にしたこともありますが,そうは思えません。

本機関連の記事としてはスタパ齋藤氏のエッセイが有名です。打鍵感についての氏の秀逸な表現を引用しましょう。

そしてキータッチも凄い。キーを押下するたびに、いちいち蛍光灯のスイッチを入切したときのようなクリック音がする。ガチョガチョと非常にやかましい。

正確に言えば,蛍光灯(ただし和室なんかでぶら下がっている古いタイプの蛍光灯)のスイッチよりももっとしっとりした艶っぽい音がするのですが,ばねの残響音を言い表すのに,実に的確な表現と思います。斎藤氏はまた,

ちょっと抽象的というか感覚的な話でわかりにくいかもしれないが、手に馴染むキーボードというのは、その全体的な感触として「キーが指に吸い付くような感じ」がするものだ。実際に意識して使ってみればわかるが、使いやすいキーボードってのは、キー押下時、キートップの四角くややへこんだ部分と指の腹がしっくりとタッチしている。逆に、使いにくいキーボードの場合は、キートップの四角部分のエッジなどにやたら指の腹が触れる感じになる。

とも書いています。私に言わせれば,鍵盤が手になじむという言葉の意味するところは,「キーの芯を叩いてるな」,という感覚です。野球でもバレーボールでもサッカーでもゴルフでも,球打ち系スポーツの経験がある方は,ジャストミートした時のコキンといく感覚をわかっていただけることと思います。無駄なくエネルギーが球に移行した感覚とでもいうのでしょうか。IBM座屈ばね系の鍵盤はこの感覚を私の指に保証してくれるという意味で,私にはかけがえのないものです。正直なところ,現在職場で使っているSpace Saver Keyboard IIを叩いてもそのような気分にはなれません。指には常に乱雑な反作用の力を感じ,キーの「芯」を外している気がします。

本機とほぼ同等品として,IBM製のSpace Saver最初期モデルと言われる1391472,1990年代半ばに出されたといわれる1395217,Manufactured for IBM by Lexmarkの銘のある1395253が知られています。1395253は青ロゴ,他は伝統的な灰色ロゴです。また,85-keyですが,Unicomp製のUNI04C6も同じ系統に数えられるでしょう。キータッチについて,これらの間に本質的な差異が存在する証拠は,私の知る限りありません。

2001年8月現在,新品入手はまだ不可能とは言えませんが,難しくなってきています。NeotecやShopUといった通好みの店を地道にチェックしましょう。上記のIBMオリジナル品はYahoo Auctionsで,2万円以上というとんでもない値段がついています(ラベル以外は実は本機と同等品なので実にこっけいなことです)。他のSpace Saverも1万円台後半です。私のような鍵盤趣味者は別として,何かと揉め事の多いオークションで,普通に使いたい人が買うべき値段ではないです。キータッチはUnicomp製もオリジナルIBMも同じなのですから,有名な座屈ばね機構を味わう目的ならUnicomp製がお勧めです。