Wednesday, April 24
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特許の話(2) 日本企業の独創性

日本国特許庁のページの「特許電子図書館」でのフロントページ検索の例を先に挙げました。たとえば,「キーボード」「ばね」と入れて検索すると,(2001年11月23日の段階では)24件ヒットします。そこから代表図と公開番号を得ることが出来ますので,必要なら「文献番号策引照会」に行って全文を見ることができます。その際,特開平07-057583とある特許なら,種別=「公開」,文献番号=H07-057583などとします。あとはいろいろ個人でノウハウを蓄積してみてください。

米国特許の場合は,USPTO(United Staets Patent and Trademark Office)のPatent Full-Text and Full-Page Image Databasesから検索するのが正攻法です。ただ使ってみればわかりますが,いろいろと面倒なことが多いので,Delphionの方が検索能率はよいでしょう。そのほか特許の検索については,やや内容が古いですが豊栖康司氏のページがいろいろと詳しいです。

ある製品についてよく知りたいと思った時,各社の一般向けのWebサイトや宣伝冊子に当たってみるのが普通だと思います。ただ問題は,ものによりますが,その製品をその会社が本当に作ったとは限らない,という事実です。たとえば,IBMの5576-002はアルプス電気との協業でつくられましたし,003はブラザー工業が供給元でした。

特許はOEMの複雑な契約関係に惑わされずに現代の科学技術の現状を知ることができる貴重な資料です。ある知見が初めて世に現れた際の資料のことを「一次資料」と言います。鍵盤にまつわる発明については,特許が一次資料であると言えます。自分で分解してその構造を解明した写真を公開したとすればそれもまたある種の一次資料となりえます。鍵盤についてはインターネット上でさまざまな言説が流れていますが,いろんなサイトから適当に文章の切れ端を切り取って並べただけのサイトが多いように思えます。情報の再配布という観点から,それはそれで十分意味のあることですが,私としては,一次資料を駆使した骨太のサイトを待望する次第です。

私は「鍵人」を書くにあたり,米国特許を大量に読みました。題名だけに目を通したものを含めると,数百件に上るのではないでしょうか。そこで気づいたのは,米国特許には日本企業が極めて多く出願しているという事実です。

2000年の米国特許取得順位をニコンのサイトから見てみると,上位60社中日本企業が21社あります。すべて製造業です。上位10社に限ると半分が日本企業ということになります。米国企業よりも多いのが注目されるところです。

特許には新規性がなければならないわけですから,米国特許庁の審査を通るということは,マスコミ用語で言う「グローバル・スタンダード」において新規性が認められたということになります。このデータを素朴に眺めれば,日本の製造業は世界一独創的な集団である,という結論が導かれそうな気がします。よく「日本人は独創的でない」などという意見がメディアを流れますが,そういう人たちがこの数字をどう判断しているのか前々から疑問に思っているところです。私に言わせれば,日本のマスメディアの独創性の方が疑問であったりしますが…。