1370475
Date: 06-07-1993
Plt. No: F8 Model M
Made in the USA
Manufactured by Lexmark
1397681と大変よく類似した84-key Space Saverです。下記に説明しますが,1397681に見られた一種の混乱が,Lexmarkの新設計に収束していった様子が見られ,これもこの1993年という過渡期の状況を示していて興味深いです。何度も書いたように,1990年代の半ばまでは,IBMの鍵盤製造部門がLexmarkとして分離し,さらにUnicompに売却されていった混乱期にあたります。
上記のとおり青ロゴです。キートップは外れずキーは一体型です。また,印字の色はAltとSysReq(PrintScreenの前面)が緑で他が黒です。NumLock用の文字の印字は灰色がかった茶色となっています。大型キーを外してみると,下図のように黒色基板であることがわかります。キーには安定用金具はすでにありません。これらはいずれも1397681と同様の特徴です。
ケーブルは着脱式で,1391401等のケーブルがそのまま使えます。薄膜接点上に座屈ばね機構のスイッチを使ったもので,その機械的性質は他の座屈ばね鍵盤と共通です。ただ,筐体が101鍵盤に比べ小さいので,共振周波数の相違を反映して,中に仕込まれた鋼板に由来する残響音がわずかに異なります。一般にSpace Saverの打鍵音は,101鍵盤にくらべて,やや軽く高い残響音が混じる傾向にあります。101の打鍵音を「カコカコカコ」と表現するなら,SpaceSaverの方は「カシカシカシ」という感じです。
裏面を見ると,Manufactured by Lexmarkと明記されています。これは1397681との大きな相違です。3つある排水口から導水路が見えています。のぐ獣氏やbabo氏の解説によれば,1993年というのはIBM鍵盤に防水機構が装備された記念すべき年です。1992年製の1397681で試用段階であった導水路等の新設計が,本機において完成を見たということなのでしょうか。
おそらくは1391472に始まり,そして現行品のUNI04C6にいたる座屈ばね式のSpace Saverの歴史を通覧してゆくと,それなりに歴史の変遷が垣間見えて興味深いです。UNI04C6の先に,ゴム椀式のSpace Saver Keyboardの系譜を置いて眺めれば,5576系日本語鍵盤ほど劇的ではないにせよ,そこから同様な物語を紡ぎ出すこともまた可能でしょう。enhanced 101鍵盤だと,ただ1391401だけでも実に6種類以上の変種があることからもわかる通り全体像が見えにくいのですが,Space Saverに絞ればある程度歴史を俯瞰し得たと言ってよさそうです。