1395217
FRU No. 1395253
Date 3/9/96
Plt. No. TC1 Model M
Manufactured for IBM by Lexmark
84キーのSpace Saverです。Lexmarkが1996年にIBM向けに製造したもの,という銘があります。一般的なモデル名ではないこともあり,詳しいことはわかりません。下記に示します通り,さまざまな謎に満ちた特徴があります。
キートップは着脱式です。まず目を引くのが,Sを中心としたキーの前面に緑色の刻印があるところです。Space SaverではKを中心にした位置に数字の刻印があるのが普通ですが,本機はその数字の刻印の代わりにPrとかWsといった用途不明の刻印があります。下の写真に示すように,左Ctrlは青,Altは緑の文字が刻されています。IBM鍵盤で黒緑青と3色使われているものは大変珍しいです。ロゴはLexmark製ということで青ロゴです。通常の英語鍵盤でバックスラッシュのある位置に「|←」のような刻印がありますが,バックスラッシュキーと同じです。
面白いのは右CtrlがEnterと書かれていることです。これはIBMの大型機の端末として作られた鍵盤にしばしば見られる特徴です。POS用と思われるコネクタの付いた1390876というIBM鍵盤でもそのような刻印が見られます。5576-001や3479鍵盤では「実行」となっています。このことから,大型機の端末用途を前提にした鍵盤と考えられますが,詳しいことはわかりません。
薄膜接点に座屈ばねをあしらった構造で,キータッチは1391401と完全に同じと言ってよいです。UNI04C6等とももちろん同じです。構造上で特筆すべきは防水構造になっていることです。42H1292のような省略版ではなく,41G3576と同様,排水口まで導水路がつけられた一応本格的なものです。IBM鍵盤の防水構造についてはのぐ獣氏の研究を参照してください。下の写真で三つある矩形の小孔が排水口です。スピーカーの穴が筐体に見えますが,もちろん内部は空洞です。ケーブルは着脱式で,1391401以来のケーブルが使えます。
キー配列は伝統的な湾曲配置となっています。他のSpace Saverモデル(Space Saver Keyboardは含みません)とまったく同じです。筐体の質感,重量感もまた違いがありません。最近の一般的なフルキーボードと比べると2~3倍は重いのではないでしょうか。この重さの由来は,キーが作りつけられた鋼板にあります。キーを叩き抜くような打ち方をしても,鋼板の剛性によりしっかりと受け止められているという感覚があります。座屈ばねのクリック感と併せ,実に爽快です。このモデルに限ったことではないのですが,私はこの種のIBM座屈ばね鍵盤を使ってみて初めて,キーボードと胸を開いて語り合っているという気になれました。表面的な気を使わずにずけずけと言い合える仲。機械との仲介者(man-machine interface)として最高の存在です。
本機は2001年8月末にShopUから売り出されたもののうちの1台です。IBMの84-key Space Saverはオークションでは2万円前後の異常な高値がつくだけに,12800円というのはかなり思い切った価格でした。User’s sideであればいくらになったか興味深いです。ちなみに,その価格で複数台購入したと思われる人が,Yahoo Auctionsで転売していたのを目撃しましたが,鍵盤趣味者としては,そのような行為は止めてもらいたいものだと強く思います。2001年10月にも本機の大量入荷がShopUで告知されていました。愚かな転売者が出ないためにも,本機種の安定供給をIBMには望みます。
詳しい情報がそのShopUのページにありますのでそちらも参考にしてください。特にキワモノ好みでなければ本機をあえて選択する必要はないでしょう。新たに購入を予定されているなら,比較的安価に手に入る85キーのUNI04C6,どうしても逆L字のリターンキーが嫌だというなら値段は張りますが84キーの1393278を勧めます。