Saturday, December 21
Shadow

1379590

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Manufactured for IBM by Lexmark
20-FEB-94
Model M4-1
Made in USA

後のThinkPadのスイッチ機構の原型となった由緒正しいゴム椀機構搭載のキーボードです。長い間箱詰めのまま放置されていましたが,これを書くにあたり久しぶりに陽の目を見ました。フォルムは実に魅力的です。まずトラックポイントが目を引きます。ケーブルは着脱式,マウスポートもついています。写真では見にくいですが,IBMロゴは銀色のレリーフになっていて,カッコいいです。

全体的に異様に軽いです。本当に軽いです。手で持った感じでは,付属のカールケーブルの重さとほぼ同じくらいです。この軽さによる位置のずれを防ぐために,裏には立派なゴム足がついています。爪足(tilt stand)までにもゴム打ちがしてあります。

キーの構造はゴム椀ばねで,下のように,上向きに口をあけたやや珍しい形をしています。キートップ中央には支柱が立ち,下の写真に見えるゴム椀中央の穴にはまります。キートップには左右の側面近くから爪のついた1mm径くらいの細い足が2本とつけられていて,それがゴム椀わきの小孔にカチンとはまるようになっています。キートップは簡単に外れます。下の写真から推測できるように,ゴムキャップは旧式の,滑らかなゴム製です。

どうしても現代のThinkPadのキーボードと比べてしまうためもありますが,打鍵感にあまりよい印象は持てません。ノートPCのキーボードのように浅いタッチであるのは別に構わないのですが,ゴム椀のくせにカサカサ乾いた音を出し,しかもゴム椀のチューニングが足りないせいか,ただぺこぺこした感じです。軟式野球のB球(というボテボテにしか弾まないヘンな玉)でノックしている感じ,と言っても理解してくれる人はほとんどいないと思いますが,固いくせに弱腰で,打っていても決して芯でとらえた感じのしない忌まわしい打鍵感です。InsertとDeleteが横に並んでいるのも困ります。むしろその違いを学習により克服しようという気にならないのが問題かもしれません。押し込み量などにおいてThinkPadに似ているところがないわけではないのですが,現代のThinkPadのしっとりした打鍵感とは本機は無縁です。

2001年8月現在,Mighty Mouse(型番は98U0150)という名前の後継機がUnicompで売られています。キータッチにおいて大幅な改善がなされていると信じたいところです。ただ,99ドルとやや高い値がついていますので,よほどのこだわりがある方以外はSpace Saver Keyboard IIを選ぶかもしれません。

本機とまったく同じスイッチの構造が,PS/2 Model L40 SXに採用されています。IBMのサイトで説明されているように,L40SXはThinkPadのルーツにあたる機種ですから,このゴム椀構造がThinkPadのキーボードの源流になっていると断定できます。このスイッチはアメリカのLexingtonにあったIBMのサイトで開発されたもののようです。その開発部隊は後にLexmarkになります。

われわれとしては,1994年におけるこのゴム椀式スイッチの不十分な現実が,現代のThinkPadにおいて目覚しく改善されているという歴史に目を向けるべきでしょう。ThinkPadの開発が本格化した時期には,LexingtonにあったIBMの鍵盤製造部門がLexmarkという別会社になっていたのはむしろ幸いだったのかもしれません。ThinkPadのキーボードと本機の明瞭な相違は,ThinkPadのキーボードにまつわる伝説が日本において準備されたことを示唆しています。IBMの大和事業所の仕事です。鍵盤界で今もなお一大勢力をなしているアルプススイッチと並んで,鍵盤史に対する日本人の貢献として特記されてよいのではないでしょうか。

本機はすでに製造はされていないはずです。ひょっとするとYahoo Auctionsで出ているかもしれませんが,上記のように,少なくともLexmarkモノに関しては,ThinkPadキーボードの輝ける名声とはまた別系統のキータッチであると考えておいた方がいいでしょう。むしろ(技術的進歩が推測される)後継機の方がお勧めです。日本ではNeotecやShopUの通販を利用して購入するのがよいと思います。