Monday, December 30
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5576-C01の分解掃除

全体におおらかなつくりのIBMの英語鍵盤と違って、5576系の日本語鍵盤は、これが日本的と言うのでしょうか、つくりが緻密で感心されられます。実際、1391401系統の101鍵盤は、裏のねじを外せばあとは何の苦もなく全体を分解できるのですが、5576-002や003、それにA01などは、不必要と思えるくらいに高いはめあい精度で設計されており、プラスチックのガワを外すのすら苦労します。

先日、汚いジャンク物の5576-C01を拾ってきたので、分解掃除することにしました。言うまでもなく5576-C01の最大の特徴は、トラックポイントです。それを操作するボタンは、鍵盤前面についています。写真の通り、そのボタンがあるために、そこの部分のガワが弱くなっており、分解に神経を使います。

実は私は今まで、壊すのが恐ろしくて分解できませんでしたが、このきったないジャンク品(コードは断線している)を使って、壊してもいいやの気分で分解してみることにしました。

まず、ガワを外す時に邪魔になるキーを引き抜いておきます。外すのは下の一列だけで十分です。引き抜き道具を使うと楽ですが、手でも外せます。ちなみに上の写真の工具は秋葉原のネオテックで買ったものです。

次に鍵盤を裏返し、ねじを4箇所外します。ただし、ドライバーは、普通のものではなくて、呼び径5.5mmのボックスレンチを使います。これはIBMの101鍵盤を分解する時に共通に使えるものです。私の持っているのはベッセル社の製品です。いい工具です。

ねじを外すと、下の写真のように、ガワが浮きます。しかし前面部が引っかかって取れません。普通の人はここで困ってしまうと思います。

しかしガワの上部を持ち、さらに力を入れて引きはがずと、バリッという非常に不安な音を残して、ガワが取れます。絵にするほどでもないですが、下のように、ガワの上部に手をかけ、てこの要領で力を入れます。

ガワを固定するツメの写真を下に示します。ツメは上のガワについています(写真は上のガワをひっくり返して撮ったものです)。トラックポイントのボタンの両側にツメがあり、これがなかなか取れません。しかし構造上、力を入れて外すと取れるはずです。ただ、寒いところだとプラスチックがもろくなっている可能性があり、事前に多少あたためると安全かもしれません(言うまでもありませんが、壊しても私は責任を取りませんので、あしからず)。

ガワが取れた後は、マウスの差込口と、ケーブルの取り回しに注意すれば、容易に「3枚おろし」にできます。汚れやすい上のガワは、水と石鹸で洗うといいでしょう。キーは一つ一つ引き抜いて、これまた水と石鹸で洗います。

内部をちょっとのぞいてみます。英語鍵盤と同様の、鋼板製基板です。湾曲も堂々たるものです。以前も書きましたが、座屈ばねのチューニングがもうちょっと上等だったら、名機と呼ばれたのに残念です。

内部の電気基板のチップの接写です。

こちらのチップには、IBM、インテル、KOREAなどの文字が見えます。

クリックボタンの接写を下に示します。分解する際、一体この部分を先に外すべきか悩みました。というのも、Space Saver Keyboard IIは、クリックボタンの部分もビス止めされているからです(START氏のホームページ参照)。結論は、別にこの部分に触らなくてもガワは外せます。ただし、クリックボタンが、ガワと引っかかることがあるので、破損に注意です。

思えば、私が最初に買ったC01は、1万円以上する新古品でした。A01と同じ打鍵感を夢見てそれを求めたもののそれはかなわず、また、その後、英語配列派に転向したこともあって、長い間本機に触れることはありませんでした。久々の出会いでした。

A01を熱狂的に信仰していた私がこの鍵盤に与えた厳しい評価は要するに、それまでの5576系鍵盤が築いた栄光の継承者としては、明らかに本機は非力であるという事実に基づいていました。A01に比べて、モノとしての完成度が劣るといわざるを得ないことは確かです。しかし、今は、本機の特異性を、もう少し積極的に評価してもいいのかもしれないと思っています。

冷静に考えれば、5576系鍵盤には、名前以外にシリーズを特徴付ける共通点は何もありません。むしろ、その驚くべき多彩さによって、鍵盤史の美しい一ページを飾ったわけです。だとすれば、本機が、伝統の座屈ばね鍵盤の慎み深さを放擲し、奔放かつ乱雑な打鍵感に終始していることも、ある意味では祝福すべきなのかもしれません。本機に見られる混沌は、まさに、5576系鍵盤それ自体の多様性、ひいては、混乱を極めた日本におけるパソコン黎明期の混沌そのものの象徴と言えるのかもしれません。

(平成2003年6月17日記)