Thursday, November 21
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IBM PCの最終モデル

IBM PC/XTの鍵盤について(2)

先に示した製品発表レターの一覧から、内容を紹介していきます(「発表レター」という訳語を日本IBMは使っているのでそれにならいます)。まず、IBM PCの鍵盤がらみの仕様が気になるところですが、残念ながら製品発表レターで検索できるのは1983年以降なので、IBM PCの初代モデル5150-001についての詳細はこれからは知ることが出来ません。ちなみに記念すべき初代PCは、前史1にも書きましたけれど、Intel 8088プロセッサ、16kB RAM、8ビットバス、といった仕様でした。フロッピーディスクドライブ(FDD)やハードディスクドライブ(HDD)は装備されていません。

IBM PC, cited from IBM Archives
IBM PC, cited from IBM Archives

発表レターから伺えるのはIBMPCの最終型、5150モデル166,および176の情報のみです。1984年6月19日に、IBM PCの後期型が発表されています。対応する発表レターは184-077番、「NEW MODELS OF THE IBM PC FAMILY IBM 3270 PC MODELS 4 AND 6 ENHANCED」です。これには残念ながら鍵盤についての記述は事実上ありませんが、同時に発表されたXTのmodel 086と並列して仕様の概略が書かれており興味深いです。

マシンスペックを追うことは本稿の目的ではないので詳細は控えます。代わりに、IBM PC(5150)およびXT(5160)の価格を比較しておきましょう。

型番価格円換算
51501661995ドル47万3852円
51501762420ドル57万4798円
51600864395ドル104万3900円

XT(5160)になっていきなり値段が上昇していることがわかります。これはさすがに不評だったと見えて、XTの後期モデルは2000ドル台に戻っています。

1984年の物価の目安が東京消費者ネットワークのページ にあります。円への換算はそのページにしたがって、1ドル237.52円で計算しました。上記の値段がPCシステムのどこまで含む値段なのか定かではありません。System/Keyboardという表現を見るところからすれば、本体と鍵盤のみの価格なのでしょうか。実際、PC/2についてですが、モニタ別売りという記事もあります。実際に使うとなると外部記憶装置なども必要で、もっと高くなるのでしょう。少なくとも、現代のPCの価格に比べて圧倒的に高価であることは確かです。

余談ながら、1984年の物価を見ると、大体において2002年とさほどの違いはないのですが、新聞購読料が異常な値上がりを示していることがわかります。日本語の壁に守られて、お役所的感覚で値上げを続けた新聞業界。かたや、世界的規模で激しい市場争奪戦をくりひろげた結果、単体の値段にして10分の1以下、CPUクロック数を元に価格性能比を計算するとざっと2000分の1以下にまで価格が低下したPC。近年言われている日本の国際競争力の低下は、前者のような業界が、後者のような業界の足を引っ張っていることに由来するのかもしれません。

(2002年8月19日)