International Business Machines Corp。すなわち「国際事務機株式会社」。これが1980年代に始まる個人用汎用計算機(PC)の時代への扉を開いた米国企業の名前である。IBMはPCメーカーとしては後発だったが,1981年のIBM PCによって瞬く間に市場を席巻する。その後IBMはPC市場の覇権を他社に譲ったが,伝説的な鍵盤をわれわれに残した。IBM buckling spring keyboard である。
一方日本では,PCにおける日本語の呪縛をDOS/Vが克服する過程で,宝箱のように多彩な名機が生み出された。最終的に標準配列機としての名声を勝ち取った鍵盤の名は,5576‐A01。IBM 5576系鍵盤は,日本語配列の確立過程と,PCの大衆化に伴う品質劣化が交差するところで,凝縮された歴史を語っている。